お客様の課題

限られた予算の中で市民の生活を維持できる地域交通ネットワークを検討したい

某自治体の交通政策担当者様は、地域公共交通の将来の姿を検討していました。この地域では人口の減少に伴い赤字路線が顕在化しており、運行ダイヤや路線ネットワーク等、サービスの縮小の検討が求められていました。

一方で、高齢者の買い物や通院、子どもたちの通学などのように公共交通は住民のライフラインでもあるため、公共交通サービスの維持も同時に求められていました。これらの要求を同時に満たす地域交通ネットワークを検討する必要がありました。

課題を解決した結果

複数の地域交通ネットワーク案を公共性・採算性の観点から定量的に評価し、適切な地域交通ネットワークを検討できた

交通サービスモデルと交通利用者モデルを用いたシミュレーションを実施しました。シミュレーション結果に基づき、デマンド交通を始めとする新たな交通サービスへの転換による効果を評価しました。

さらに地域特性に応じた既存の交通サービスと新たな交通サービスを組み合わせた複数の地域交通ネットワーク案について評価しました。複数の地域交通ネットワーク案の評価結果を比較し、公共性と採算性を考慮した適切な地域交通ネットワークを検討することができました。

解決のために行なったこと

交通サービスと交通利用者の特徴を考慮した地域交通ネットワークの評価

担当者様は、「採算性」と「公共性」の間のトレードオフで悩んでいました。私たちは、市民の生活を守ることを優先的に考え、公共性を維持しながらも採算性を悪化させない公共交通の姿として、別の交通サービスへの転換も考慮した地域交通ネットワークを提案しました。

【 現状の把握 】
同じ地域内でも、路線によって収益状況や利用状況は大きく異なります。そのため、まずは現状を把握するところから着手しました。地域の主な交通機関である路線バスを対象に①バス路線の評価②バス利用環境の評価を行うことで現状把握を行いました。

①バス路線の評価
現在の全バス路線の各区間における輸送効率、輸送量を評価しました。また、バスの利用状況(平均乗車密度、平均運行回数等)から、バス路線の需要・供給のバランスを評価しました。

②バス利用環境の評価
地域の高齢化率や公共施設・商業施設の位置、コミュニティ交通導入実績などを考慮し、バス路線の各区間における住民の生活圏やニーズを把握しました。

【 交通サービス転換区域の特定 】
バス路線の各区間における①バス路線の評価②バス利用環境の評価を加味したうえで、コミュニティ交通への転換を図るべきエリアを生活圏等の区域別に整理しました。区域別の整理結果に基づいて、コミュニティ交通への転換を図る対象区域の候補を選定しました。

①バス路線の評価②バス利用環境の評価を加味して区域ごとに計算した転換優先度マップ
(転換優先度合いの高い区域ほど色が濃く、優先度の低い地域ほど色が薄い)

【 交通サービスの転換を考慮した地域交通ネットワークの検討 】
交通サービスを転換したときの効果を事前に見積もることができると、交通サービスを選定する際の有用な意思決定材料になります。私たちは、シミュレーションによって交通サービスを転換した場合のコストや収益・利用者数などを推計し、効果を見積もりました。このシミュレーションの結果に基づいて、区域ごとに適切な交通サービスを検討できるようになりました。

シミュレーションにあたっては、①交通サービスのモデル化②交通利用者のモデル化を行いました。

①交通サービスのモデル化
既存の交通サービスと新たな交通サービスの特長について、輸送能力、導入・運用コスト等を整理しました。整理した各種交通サービスの特徴に基づいて各種交通サービスをモデル化し、導入に伴うコストや導入した際の利用者数を推計できるようにしました。

②交通利用者のモデル化
アンケートなどにより交通利用者が交通手段を選択する際の判断基準などについて調査し、交通利用者の交通手段選択をモデル化しました。

これらのモデルを用いて、実際に代替交通サービスを導入した場合のコストや利用者数などを区域ごとにシミュレーションしました。シミュレーションの結果を用いて区域ごとに適切な交通サービスを検討し、公共性と採算性の両面から地域交通ネットワークの案を比較検討する材料を提供しました。

【 実施内容のイメージ 】

各種交通サービスの特徴を表す交通サービスモデルと交通利用者の交通手段選択を表す交通利用者モデルを用いて、交通サービス利用シミュレーションモデルを構築しました。このシミュレーションによって、ある交通サービスをある区域に導入した際のコストや収益、利用者数を見積もることができました。

これによって、どの区域にどういった交通サービスを導入すると公共性と採算性の両方を維持できるのか、実際に交通サービスを導入しなくても評価できるようになりました。

【 地域交通ネットワーク案比較のイメージ 】

  • 複数の交通サービスについて、その組み合わせによって地域交通ネットワークを検討しました。
  • 検討した複数の地域交通ネットワーク案について交通サービス利用シミュレーションを行い、導入・運用コストや利用者を推定し、公共性・採算性を評価しました。
  • 評価結果に基づいて交通サービスのより良い組み合わせを見つけ出し、公共性と採算性のバランスを考慮した地域交通ネットワークを検討しました。

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