お客様の課題

長年にわたって蓄積されたノウハウの定量化ができず、「モノが売れなくなった」ことの適切な分析と対策の立案ができていない

某小売会社の販売戦略本部マーケティング担当者様は、ここ数年、自社の売上がなだらかな下降傾向にあることから、売上減少原因の特定と売上向上施策の実施を検討していました。しかし、売上はさまざまな環境要因が同時に作用して決まるため、減少原因を特定することは容易ではありません。

また、これまではベテラン社員の「経験と勘」といったノウハウに頼ってきました。「こうした方が売上が良くなる」「こうすることによってお客さんは喜んでくださる」「この時期はこれが売れる」「こういうタイプのお客様はこのような商品を好む」など定性的なノウハウは多いです。しかし、これらのノウハウは定量的に検討されていないため、本当に売上に繋がる適切な対策であるのかを判断できていませんでした。

課題を解決した結果

シミュレーションの結果に基づき店内レイアウト変更を実施し、前年同月比で平均購入点数・客単価が上昇

顧客行動データ、POSデータ、マルチエージェント・シミュレーションを利用した定量的な検証により、これまでの経験や勘が間違っていなかったと裏づけることができました。

*複数(マルチ)の「エージェント」を用いた仮想実験(シミュレーション)のこと。
「人(エージェント)の条件、空間の条件等を自由に設定できる」「エージェント同士の相互作用を表現できる」「何度でも実験できる」といった特徴を持つ。

また、マルチエージェント・シミュレーションを利用することで人と商品種類の相互関係を考慮した複数の店内レイアウト変更案について併売効果などを検証することが可能になりました。

シミュレーションによる検証を通じて人と商品種類を変えながら併売効果が最大となる店内レイアウトを決定することができ、実際の店舗の売上向上にもつながりました。

解決のために行なったこと

店舗で「目的買い」と「ついで買い」をシミュレーションし、店内レイアウトの変更案を提案

店舗の売上を向上するためには、プロモーションの実施などさまざまな方法がありますが、今回は併買行動に着目しました。

お客様の商品購入には、「目的買い(計画購買)」と「ついで買い(非計画購買)」の2種類があると言われています。 1つ1つの商品がどちらの買い方をされているのか、実際のPOSデータ(レジレシート)を用いて分析し、お客様の行動をモデル化してシミュレーションしました。その結果から店内レイアウトを変更して、売上へのインパクトを検証しました。

本件では、次のプロセスを繰り返してコンサルティングを実施し、売上の向上が見込める店内レイアウトを検討しました。

STEP1顧客の購入行動に関するデータの分析
STEP2シミュレーションによる適切な店内レイアウトの検討

STEP1.顧客の購入行動に関するデータの分析・解釈
POSデータとアンケートから、「目的買い」される商品と「ついで買い」される商品を推定し、テキスト分析(キーグラフ分析※)を用いて商品間の併買関係を把握しました。
例えば、油性ボールペンを買う顧客はキャラクターステッカーも同時に買う傾向があることが分かりました。

【キーグラフ分析による併買関係の抽出】

※キーグラフ分析とは
東京大学大学院工学系研究科教授・大澤幸生氏が提唱する分析手法。テキスト・データを用いて、ある単語の出現頻度と共起関係を可視化する。出現頻度の多い単語だけではなく、出現頻度は少ないが、出現頻度が高い単語と一緒に出現し、文脈上重要な単語を可視化させることで、新たな仮説や知見、セグメントなどを発掘できます。

STEP2. シミュレーションによる適切な店内レイアウトの検討
STEP1で実施した商品間の併買関係の分析結果から併買行動が起こる店内レイアウト案を作成し、コンピュータ上の仮想店舗に反映させました。顧客の購買行動を仮想店舗上でマルチエージェント・シミュレーションによりシミュレーションし、次のような観点で課題を改善するための対策をご提案しました。

  • 店内レイアウト変更に伴う売り上げ向上効果
  • 店内レイアウト変更に要するコスト

【マルチエージェント・シミュレーションのイメージ】

【店内レイアウト変更のイメージ】

【シミュレーション結果の評価イメージ】

いくつかの店内レイアウトの変更案を提案し、具体的な商品配置の効果をシミュレーションしました。シミュレーションによって、各レイアウトの変更案について売上効果を評価できました。
実際に店内レイアウト変更を行った結果、前年度の同月比で、平均購入点数・客単価いずれも増加しました。

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