お客様の課題

オンデマンド交通の導入にあたって、さまざまな条件を考慮したサービス設計・事業性評価を行いたい

お客様は、ある地域で展開していたバス事業が継続して赤字になっていることから、個別輸送によるオンデマンド交通事業への転換を検討していました。しかし、オンデマンド交通の事業性を定量的に評価することは容易ではありません。

課題を解決した結果

場所や時間などの制限を受けず、多様なケースを想定したオンデマンド交通のサービスの設計および事業性評価を実施でき

マルチエージェント・シミュレーションの活用によって、以下のようなさまざまな条件を変更させたシナリオについてオンデマンド交通の導入効果を評価できました。

*複数(マルチ)の「エージェント」を用いた仮想実験(シミュレーション)のこと。
「人(エージェント)の条件、空間の条件等を自由に設定できる」「エージェント同士の相互作用を表現できる」「何度でも実験できる」といった特徴を持つ。

  • 利用者ごとの移動手段の選定基準
  • 利用者ごとの時間帯別のOD
    (※出発地(Origin)から目的地(Destination)までの移動のこと)
  • 使用する車両タイプ
  • 配車のアルゴリズム

また、オンデマンド交通の導入効果の評価指標として、運用コストや利用者数といった指標を用いました。これらの評価指標に基づいてオンデマンド交通の導入効果の評価と設計の見直しを繰り返したことで、地域特性に合った地域交通ネットワーク案について評価できました。

解決のために行なったこと

オンデマンド交通モデルを構築し、オンデマンド交通を導入した場合のさまざまな効果を評

「シミュレーション」とは、予測や分析のために現実を模したモデルによって行う仮想実験のことです。本件では、利用者それぞれの好みや移動スケジュールと、交通サービスとの相互作用を組み込んだマルチエージェント・シミュレーションを利用してオンデマンド交通の導入検討を実施しました。

本件では、次のプロセスでオンデマンド交通の導入検討を支援しました。

STEP1ODの推定
STEP2オンデマンド交通モデルの構築
STEP3シミュレーションによる効果の評価

STEP1. ODの推定
実際の交通データなどをもとに、シミュレーション時にシナリオとして設定する対象地域内の利用者のODを利用者・地域特性ごとに推定しました。

例えば下表のように、シミュレーションの対象とする利用者・地域特性を具体的に定義します。

【シナリオにおいて考慮する人の条件の例

利用者学生、就労者、高齢者等
地域特性住居、学校、職場、病院、商業施設、観光施設等

STEP2. 移動手段モデルの構築
オンデマンド交通を表現するモデルを構築しました。使用する車種や車両台数、配車のルールなど、様々な導入シナリオを表現しました。

さらに、オンデマンド交通を含めた各種移動手段について、下表のようにシミュレーションの対象とする移動手段の種類や特徴を具体的に定義しました。

シナリオにおいて考慮する移動手段の条件の例

移動手段徒歩、電車、バス、タクシー、オンデマンド交通等
移動手段選択の条件移動距離、移動時間、待ち時間、費用等

STEP3. シミュレーションによる効果の評価
ODとオンデマンド交通モデルに基づき、実際にオンデマンド交通を利用する利用者の動きをシミュレーションしました。結果として、従来事業と新たに検討する事業の複数プランのそれぞれについて、費用対効果・利用者数などの指標を出力し、適切なオンデマンド交通の導入プランを提案しました。

シミュレーション結果の評価イメージ】

事例の概要をまとめた資料を無料でダウンロードいただけます。